雨の巫女は龍王の初恋に舞う
 璃鈴は立ち上がると、ゆらりと舞を始めた。手にした羽の扇子をひらりと仰ぎ、その動きにつれて巫女の衣装がたゆたう。緩急をつけてひらひらと舞うその様は、人の目に触れることはない。それは、空の龍神にのみ捧げられる舞なのだ。


 雨ごいの舞は、日のある間は休むことなく続けられる過酷な舞だ。里ではみんなで舞っていたが、ここで舞うのは璃鈴一人だけだ。皇后の地位についた雨の巫女は、格段にその力が強くなるという。


「始まったようですね」

 湖のこちら側で様子をうかがっていた秋華がつぶやくと、冬梅も厳しい目で舞台を見つめた。薄い幕の向こうに、ときおり影が動くのが見える。

 龍宗も璃鈴の部屋の中からその影を見ていたが、女官が朝議の時間だと告げに来ると、静かにその場を後にした。


  ☆

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