豚は真珠♡


教室に入ると、まだそんなに来ていない様子で静かだった。
(よかったー…。)
私は胸をなでおろす。




自分の席につきいつものようにガムと飴をカバンから出していると
『おっはよ〜ん。』
明るい声が聞こえてきた。
誰が入ってきたのかと皆入り口を見る。





そこには昨日峰くんといた男子、おそらく白路君と、その隣に凄く眠たそうな峰君がいた。
さっきの挨拶は白路君だったようだ。
私は一瞬固まり、直ぐに自分の席の方に向き直した。
(やばい。来ちゃった…来ちゃったよぉー!)


真理亜が隣で『大丈夫?』と心配そうに声をかけてくる。
更に、後ろの席の今野が『おはよ〜』といって入ってきた。

(よかった。取り敢えず周りに人がいれば何とか過ごせそう。)

私は少し落ち着いた。

そして、今野が席に着こうとバックを置いた瞬間…
峰君と白路君が私達の側に歩いて来た。

(え?なんで…こっちに来るの〜)
そう思っているうちに

『あの。』
峰君が話しかけてきた。
今野と真理亜がキョトンとした顔で二人を見上げている。
私は顔を上げることができずにいた。
峰『あの。三木さん。昨日の事なんだけど…』
白路『ごめんね。昨日びっくりさせちゃったよね。』

(え?今なんて…?)
思わず顔を上げて二人をみる。

『え…。私は別に…その。』
私が口ごもっていると、
真理亜『あの!』
そう言って真理亜が立ち上がった。
"ガタッ"
椅子の音が鳴り響く。

真理亜『この子と仲良くしてあげて下さい!!』

(へ?真理亜さん?何を…おっしゃって…いる…の?)
私は頭がフリーズ。

真理亜『あの!この子私と今野以外と話した事殆どないんです。だからちょっと免疫が無くて凄く無愛想になっちゃうんですけど…その…出来たら友達になってあげて下さい!』
今野もキョトンとしている。
すると隣にいた白路君が突然爆笑。

『アハハハ。そんな事を言われると思ってなかった。なあ、守人』
隣にいる峰君にそう言う。
峰『うん。むしろ俺の方が友達になってって言いに来たんだけど…』

『『え?!』』
思わず私達は揃って声をあげた。

真理亜『よ、よかったじゃん。』

今野『お、おう。そうだよ。良かったじゃん。よくわかんねーけど…』
二人が明らかに困惑している様子。

続けて、真理亜が私を見下ろして、
『と、取り敢えず、うちら以外の人との免疫つけるところからがんばろ!ね?』
真理亜が私に同意を求めてくるが…

(そんな事をいきなり言われても…何て返せばいいのか…)

そんな事を考えていたら峰君が
『宜しくお願いします!』
といって握手を求めてきた。

(え!ちょっとまって。握手なんて出来ない!無理無理!)
私が目で真理亜に訴えると、

真理亜『宜しくお願いします!』
そう言って、私の手を無理やり掴み峰君と握手させた。

(ちょっとぉぉぉ!真理亜ー!!!!)
私の心の声は届かない…
もはや息の根が止まりそうである。
逃げようの無い状況。

『よ、よ、よろしくお願いします…』
私も蚊の泣くような声で言った。
体中の水分がどっかに飛んでいくんじゃないかと思うくらい汗がでていた。

白路君『因みに僕もよろしくね!白路 頼寿。よりって読んでね。』
そう言って謎のウインク。
引きつった笑顔で私達は会釈した。

(謎だ。この人達…)
そんな衝撃的な朝だったのでその日一日はボーッとして終わった。
授業も受けたのか覚えてないくらい。



(友達って…)

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