豚は真珠♡
−今野side−
俺は教室を出た後早足で昇降口に向った。
一刻も早くこの場を去りたい。そんな気持ちだった。
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病室にて。
俺は病室のベッドで目が覚めた。
あの診察室で発作を起こしたのだろう。
横を向くと凄く悲しそうな顔をした空とその隣に母親がいた。
『空、母さん…。』
俺はガラガラの掠れた声で二人を呼んだ。
すると悲しげにうつむいていた二人が一気にこちらを向き、
『お兄ちゃん!』
『翼!』
と言って立ち上がった。
二人とも兎に角安堵したようだった。
空は俺が突然倒れたから、自分を責めたのだろう。その不安を押し付けるように俺に抱きついてきた。
空『お兄ちゃんー!よかったよぉ!』
『空、ごめんな。心配かけて。』
俺は空の頭をなでてやった。
そんなやり取りをしている時に担当の先生が入ってきた。簡単な診察をその場でして、その後俺達三人に向かって話し始めた。
先生『落ち着いて聞いてください。翼君の病状ですが少し前よりも悪くなっているようです。』
それを聞いた母親が口を抑える。
空『お兄ちゃんはどうなるんですか?どうにかならないんですか?』
空が追い立てるように言う。
先生『落ち着いて。実際の所今の日本には翼くんの病気を治療できる担当医や医療がありません。でもアメリカに同じ病気を治療している担当医がいます。彼も今現在進行系で治療をしている段階ですが、少しでも出来ることはあると思います。』
母親『それじゃあ。翼をアメリカへ行かせなければ行けないと言うことですか?治る保証もないのに。』
先生『えぇ。保証は無いです。でも少しでもそれで前を向くことが出来るなら、未来を切り開けるなら…。アメリカの患者様はかなり深刻な状態だそうです。でも翼君は悪くなっているとはいえまだ初期の段階です。もしかしたら今のアメリカの医療なら翼君に未来を見せることができるのかもしれません。』
先生はそう言って俺を真っ直ぐに見た。