豚は真珠♡
うちの学校は昇降口の更に先に体育館がある。
何故か今日はやけに人がいないのか静かな感じがした。
そんな事を思いながら昇降口の前まで来たときに体育館と昇降口の間の通路から話し声が聞こえてきた。
『で。これは誰にもらったの?』
『別に。誰でも良いじゃないですか。』
『だって、こんな可愛いビニールに入ったハンカチ普通下駄箱に入れなくない?』
『知らないって。』
『いや、その顔は身に覚えがある顔だぁー。』
私はその会話を聞いた瞬間…背筋が凍った。ビニールに入れたハンカチ。身に覚えがある。
それにこの声にも聞き覚えがあった。
(これは…峰君の声だ。その隣にいるのは誰?気になるけど…でもここで顔を見られたりしたら終わりだ。どうしよう。)
そこまで頭が回っているのに、何故かその時の私は衝動が抑えられなかった。
壁からそっと顔を覗かせて見ると、そこには部活の格好をした峰君がいた。
(やっぱり。てか、峰君ってバスケ部だったんだ。)
その隣には同じくバスケ部であろう格好をした少し明るい髪で短髪の男子がいた。
峰君と同じくらいの身長でスラッとしている。
(誰だろ。)
そんな事を考えていたらクルッと峰君がこっちに振り返ってきた。
(わ!!!)
すかさず壁に身を隠したが遅かった。
ズカズカと足音が近づいてきたかと思うと…
峰君『あの…。何してるんですか。ハンカチ…なんで貰ってくれなかったんですか。』
『へぇぇえ?!』
峰君にそんな事を言われると思ってなかったので私は思わず変な声が出てしまった。
更にその後ろから
『え?!この子だったの?!ハンカチ!』
とでかい声が聞こえてきた。
コミュ症な私はもうその場にいるのが限界になり、
『ごめんなさい!!失礼しました!あ…あのぉ!ハンカチ有難うございました!!』
90度に体を曲げ深々と頭をさげてから目も合わすことなく猛ダッシュで靴を履き駐輪場に走った。