冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
プロローグ


目の前に佇む端整な顔立ちの男性からは、拒絶の意思をありありと感じた。

かつては有った優しさや情は、欠片も残っていないようだ。

他人になったふたりなのに、今また縁を繋ごうとしている。お互いにとって不本意で予想外な関係を。

司波和泉(しばいずみ)は和倉奈月(わくらなづき)にとって特別な存在だった。

初めての恋人。キスもセックスもなにもかもが初体験で、彼と過ごした日々はまるでとろりとした蜜に浸かっているように甘く濃厚なときだった。

いつまでも幸せが続くのだとそう本気で信じていたけれど、別れは突然訪れた。

当たり前のように側にあった温もりを失い、恋を諦める辛さを知った。

失恋の痛みは今まだ癒えずに奈月を苦しめている。

おそらく彼を忘れる日なんてやって来ないのだろう。瞼を閉じれば彼との想い出が鮮やかに浮かぶのだから。
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