冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
寒さを感じて目が覚めた。
(あ……私、倒れちゃってたんだ)
辺りはすっかり暗くなっている。目を凝らして壁の時計を見ると午後六時三十分をさしていた。
三時間以上倒れていたことになる。
ゆっくりと体を起こしてみた。先ほど感じた眩暈は一時的なものだったのか、今はすっかり治まっていた。ただ体のだるさはある。
「もしかして病気なのかな?」
和泉と別れたあと、精神的にいっぱいいっぱいで体調にまで気を配っていられなかったけれど、近い内に病院に行って検査した方がいいかもしれない。
スケジュールを考えていると、部屋にノックの音が響いた。
「はい」
髪を手で整えながらドアに向かったが、辿り着く前にカチャリと扉が開いた。
「あ……」
入って来た人物を目にした奈月は動揺してその場に立ち尽くした。
(和泉……)
まさか彼が来るとは思わなかった。先ほどの冷たい態度を思い出し、自然と体が震えてしまう。
(また何か言われるのかも)
表情も強張ってしまったようで、それに気づいた和泉が眉を顰める。
彼は部屋を見回しクローゼットの前の荷物を見つけた。
「片付け中だったのか?」
「はい」
奈月は頷いた。次に何を言われるのかと不安が募る。
「少し話がある」
ああ、やはりと心が重くなった。昼間よりももっとキツイことを言われたら冷静でいられるか自信がない。
聞きたくないなんて言える訳はないけれど、怖かった。