冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
(私が……妊娠している? まさか……)

自分の体の中に、新しい命が宿っているなんて信じれらない。

(そんな兆候はあった?)

目まぐるしく考え、そう言えば生理が来ていないことに気が付いた。

(うそ……ほんとうに?)

腹部をそっと触ってみる。まだ何の変化もない。

「気付いていなかったのか?」

和泉は驚いた表情をしていた。奈月は小さく頷く。

「気付かなくて……今でも信じられない」

和泉は疲れたように息を吐く。

「事実だ。時期的に俺の子の可能性がある」

「え、可能性って?」

言われた意味が理解出来ず、奈月は和泉を見つめる。彼は淡々と続けた。

「俺以外にも父親の可能性がある男がいるだろう。好きな男が出来たから別れたい。お前はそう言っていたんだからな」

「あ……」

彼に別れを告げたときの自身の言葉を思い出した。

『和泉より好きな人が出来たの』

和泉が疑うのも当然だ。ざっと血の気が下がった。

「わ、私には……」

他の男の人なんていない。そう訴えたくても声が出せなかった。

(信じて貰えるわけがないじゃない)

和泉の険しい顔、ままならない体。

現実が恐ろしくて何も考えられなかった。

< 105 / 226 >

この作品をシェア

pagetop