冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
偽りの婚約者
予想もしていなかった妊娠に奈月は酷く混乱していたが、それは司波家の人々にとっても同様だった。
和泉は思い悩んでいるようで、ときどき上の空になる。亜貴は和泉と奈月の交際を知らなかったため、ショックを受けた様子だった。
仕事で留守にしていた和泉の父、司波隆司も亜貴から報告を受け急遽帰宅した。
和泉に伴われて挨拶をしたものの明らかに不快そうで、気まずさはますばかり。
司波隆司はすぐに奈月の叔父を呼び出した。両家での話し合いの席に和泉は呼ばれたが奈月には声がかからなかった。
ただ話し合いの後に叔父が奈月の部屋にやって来て、激しく罵倒をされた。
叔父にとっても青天の霹靂だから怒るのは予想していたものの、つばが飛ぶほど激高する姿はあまりに恐ろしい。
しかし一番悲しいのは、広川堂の仕事を諦めなくてはならなくなったことだ。
体調が優れないだけでなく、司波家側からも強く止められたため、続けることが出来なかった。
好きな仕事が出来ず、慣れない場で生活をする日々は孤独で辛いものだった。