冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
初対面では親切だった亜貴も、発覚以降は奈月に対してよそよそしい。突然の状況に戸惑っているのは分るが、一層身の置き場がなさを感じる。

かといって和泉に頼ることだけは絶対に出来ないまま、一日中自室に閉じこもって過ごしていた。


そんなある日。

珍しく気分が良かったせいか庭を散歩したくなり自室から出た。

玄関はいつ来客があるか分からないので、別の出入口に向かう。

出入口近くの部屋は北側で日当たりが悪い為、普段使われていないのだが、奈月が通りがかった時に思いがけなく話し声が聞こえて来た。

「何をもたもたしているの?」

責めるようなその声は亜貴だった。

どうして彼女がこんなところに? そう思った直後、低い男性の声が答えた。

「その件は放っておいてくれ」

和泉だった。奈月は動揺してその場に立ち尽くした。

(こんなところで話しているの? どうして……)

リビングでも和泉の部屋でもなく、まるで人目を避けるように何を話しているのだろう。

(亜貴さん焦っているみたいだけど)

司波家で問題が起きているのだろうか。
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