冷徹旦那様との懐妊事情～御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない～

かなり気になるけれど、盗み聞きはよくないので立ち去ろうとした。その時、聞き捨てならない発言が耳に届いた。

「奈月さんのお腹の子の父親は和泉じゃないかもしれないのよ？　DNA検査をしてはっきりさせるべきだわ」

冷たいものを飲み込んだように、胸の奥がひやりとした。

（亜貴さんにも疑われているの？）

まさかそんな目で見られているとは思わなかった。なぜなら妊娠が発覚した後に和泉が数ヶ月前まで付き合っていたと関係者に説明したからだ。そのとき亜貴は驚きながらも納得したはずなのに。

軽蔑されても仕方がないけれど、それは婚約する前にしっかり避妊をしていなかったことについてだと思っていた。

（亜貴さんは和泉の説明自体を信じてなかったんだ……）

バクバクと心臓が音を立てる。嫌な汗が滲み、眩暈がしそうだった。逃げ出したいのに、体が固まってしまったように身動きできない。

「検査はまだ考えていない」

「どうして？　ちょっと悠長すぎるんじゃないの？　もう検査を出来る時期なんだし今すぐしなさい。このままでは司波家の血を引いていない子供を妊娠した女性と結婚することになるのよ、分かってるの？」