冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
亜貴の苛立った声が聞こえてくる。

「言われなくても分かっている。口出ししないでくれ」

「するわ。これはあなただけの問題じゃないの。司波家の問題よ。いいわ、私が奈月さんに話します。疚しいことがないなら断らないはずよね? 彼女は和泉以外とは付き合っていないのよね?」

「それは……」

和泉が言葉を濁した。彼は奈月が他の男性と関係を持っていた可能性が高いと考えているのだから当然の反応だけれど、胸が痛んだ。

(これ以上聞きたくない)

固まった体を無理やり動かし、音を立てないように移動する。

庭にでる扉に辿り着くと、そっと開き外に出た。


(司波家の人たちが私をどう思っているのか、はっきり分かった……)

全く信用されていないのだ。

実の弟である和泉の説明すら信じないほど、奈月に不信感を持っている。

司波家で働く人々も口にはしないけれど、奈月を疑いと軽蔑の目で見ているのかもしれない。

(みんなに疎まれてるんだ)

この状況を招いたのは自分自身だけれど、辛すぎる。

花壇横のベンチに腰を下ろし、項垂れた。

(DNA検査ってどういうものなんだろう)
< 109 / 226 >

この作品をシェア

pagetop