冷徹旦那様との懐妊事情～御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない～

まだとても小さな赤ちゃんにそんな検査をして問題はないのだろうか。痛みや苦痛があるのだとしたら怖い。

考えれば考える程不安がこみ上げる。

検査なんてしたくない。だけど子供の父親は和泉だと言い張ったところで、誰も納得してくれない。

亜貴のあの剣幕では、近い内に奈月の意思は関係なく検査の運びになるはずだ。

（でも和泉は乗り気じゃなかった気がする。面倒そうだった……何を考えているのだろう）

付き合っている時は彼の気持ちが分ると思っていた。でも今はまるで分からない。別れてまだ三カ月ほどしか経っていないのに、計り知れない距離を感じる。

考えに沈んでいるうちに日が沈み気温が下がり始めた。冷たい風が吹きつけ奈月は身をすくませた。

「寒い……」

居心地の悪い家の中に戻りたくないけれど、体を冷やすのはよくない。

仕方なくベンチから立ち上がったそのとき、思いがけない声がした。

「奈月！」

「え？……和泉？」

奈月が出て来た扉とは別方向から和泉が駆け寄って来る。

何事かと立ち尽くしていると、彼は奈月の目の前で立ち止まり、眉をひそめながら口を開いた。

「ずっとここに居たのか？」