冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
(羨ましいなんて思ったら駄目。病院も手配してくれたし、送迎に車も用意して貰える。私だって恵まれている)

そう言い聞かせることで気持ちを保った。

奈月の妊娠の経過は順調のようだ。

妊娠十三週。外見上の変化は殆どないが、確実に命は育っている。

エコーに映る小さな白い影を見ると胸がいっぱいになった。現状は辛く苦しいけれど、この子が今も頑張って育っているのだと、妊娠して初めて喜びを感じた。

母親になる覚悟なんて少しも持てていなかったのに大切にしたい、そんな気持ちが湧いて来る。

(和泉にも見て貰いたいな)

信じて貰えなくてもこの子は間違いなく彼の子供なのだから。

(彼は見たくないだろうけど……でも、本当にこのままでいいの?)

赤ちゃんの存在を実感したせいか、それまでとは違う考えが生まれ始めた。

奈月が認められないのも、疎まれるのも仕方ない。けれど生まれてくる子供には何の罪もない。それなのに父親に認めて貰えないなんて可哀そうだと。

(検査が怖いなんて言ってる場合じゃない)

和泉の子だとしっかり証明するべきだ。結果が出たところで奈月への不信感が無くなる訳ではないだろうが、子供の立場は安定する。

帰ったら和泉に検査をすると言おう。そう決意を固めた。

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