冷徹旦那様との懐妊事情～御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない～
意気込んでいたものの、和泉は朝仕事に出たきり夜の八時を過ぎても帰宅しなかった。

今日も外泊するのかもしれない。妊婦検診に行くと分かっているのだから帰宅してくれると思っていたけれど。

「甘かったな……」

はあと溜息を吐く。また勝手な期待をしてしまっていた。

どうしても本来の彼の優しさを思い出してしまうのだ。

あの時別れていなければ、きっと今頃不安にならないように側で支えてくれたはずだ。

（病院にも付き添ってくれただろうし、DNA検査なんてしなくても信じてくれたよね）

和泉と過ごした日々を思い出し感傷に浸っていると、部屋にノックの音が響いた。

「はい」

和泉かもしれない。

落ち着かない気持ちで座っていたソファーから立ち上がる。しかし開いたドアの向こうに居たのは亜貴だった。

「……亜貴さん？」

仕事帰りなのかネイビーのスーツ姿の彼女は、浮かない表情をしていた。

「奈月さん、少し話があるのだけれど」

「あ、はい、どうぞ」

検査の話かもしれない。緊張しながらドアの前から下がる。
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