冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「……部屋については考えておく。買い物はひとりでは無理だろう」

和泉の視線は奈月の腹部に向いていた。比較的厚手のカーディガンで覆っているので膨らみは分からないはずだけれど、和泉の視線はそこから外れない。

「あ、今ならまだ大丈夫。でももっとお腹が大きくなったら動き回るのが大変になるそうなので今のうちに済ませておきたいと思って」

奈月は少し戸惑っていた。予想では和泉は素っ気なく了承するはずだったのだ。

(どうして渋ってるのだろう……まさか、自分で選びたいとか? いやそれはないよね)

悲しいけれど和泉は、奈月の子供の誕生に大した関心を持っていないのだから。

「俺が手配するから、必要なもののリストを送ってくれ」

奈月は思わず瞬きをした。

(え……本当に自分で選びたいの?)

まさかの展開だ。ただ、奈月としては全てを彼に任せるのに躊躇いがある。赤ちゃんの使うものは自分で選びたいし、そこは譲ったとしても出産に必要な下着などは絶対に自分で買いたい。

(困ったな……)

「不満そうだな」

「いえ、そうじゃないけど……」

しばらく迷ってから、妥協案を提案してみた。
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