冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
あまりに予想外だったので、素の声が出てしまった。慌てて口を押えながらも頭の中では疑問符が踊っている。そんな奈月を見た和泉が苦笑いになった。

「驚かせてしまったようでごめん。和倉さんの話をもう少し聞きたいと思って誘ったんだ」

「……私の話ですか?」

奈月の何を話せばいいのだろう。そもそも彼が和食器店の従業員の話す内容に興味を持つと思えないけれど。

「和倉さんの説明は素人にも分かりやすかったからね。最近、和の器に関心を持っている顧客と会う機会が多いから少し勉強しておきたいんだ」

「あ……う、器の話ですね」

奈月は引きつった笑いを浮かべた。

(そうだよ、器の話に決まってるじゃない! 何勘違いしてるの私……)

彼のような人が奈月を気にする訳がないのに。自意識過剰な勘違いが恥ずかしい。

ますます熱を持つ頬を手で押さえながら、奈月はたどたどしく返事をする。

「あの、お店を抜けても問題ないか確認して来ます。少しだけお待ちください」

和泉の前から離れギャラリーの方にいる友也の元に許可を貰いに向かう。社長が居ない今は彼が奈月の上司に当たるからだけれど、彼が駄目という訳がないと分かっていた。
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