冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
和泉はメッセージで言っていた通り、翌日の夜十一時過ぎに帰宅した。
思い切って部屋から出て出迎えると、彼は少し驚いた顔をした。
「起きていたのか?」
驚いてはいるものの、不快そうな様子はない。奈月はほっとして頷いた。
「お帰りなさい、長期出張お疲れさまでした」
「ああ」
和泉は相槌を打った後、黙り込む。昨夜メッセージをやり取りした時よりも実際顔を合わすと距離がある。
少しだけ和泉が歩み寄ってくれているのだと期待していたから、落胆した。
(そんな都合よくはいかないよね)
これまでの経緯を思えば、簡単に仲良くなんて出来る訳がないのだから。
それでも奈月を無視したりはせず立ち止まってくれている。これは彼の優しさだ。
「呼び止めてごめんなさい」
「いや……」
「お休みなさい」
あまり引き止めたら悪いと思い踵を返した。その時呼び止めるように和泉に名前を呼ばれた。
「奈月」
「はい」
「今後、俺の出迎えは必要ない」
短い言葉だったけれど、胸に突き刺さった。