冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「うーん。でも奈月さんは全然つけてないですね」

ウイリアムズの視線が奈月の頭から胸元に移動する。彼の隣に座る和泉にも見られているのを感じた。

「私は……仕事中は身に付けないようにしているんです」

実際はプライベートでもほとんど付けないが。

「ああなるほど。奈月さんは綺麗だから飾らなくても大夫ですからね」

「あ、ありがとうございます」

ウイリアムズが真顔だからか、社交辞令だと分かっていても動揺してしまう。

(いつの間にか奈月って呼ばれているし)

まあ彼は海外の人だからファーストネームで呼ぶのが自然なのかもしれないけど。

(それにしてもいつ器の話をするんだろう)

全くその方向に行く気配がない。これでは奈月が来た意味がないような気がする。

(いいのかな……)

松花堂弁当に向けていた視線を上げると、和泉と目が合いドキリとしてしまった。

彼がとても優し気な目を奈月に向けていたから。

「あ、あの……」

「奈月さん、さっき説明して貰った織部焼についてもう少し聞いてもいいかな?」

「は、はい、もちろん」

居住まいを正しながら頷いたものの、心臓がドキドキうるさく騒いでいた。
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