冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「家で司波家との政略結婚の話が出ていると聞いて……叔父様たちはみんな愛理と和泉が結婚するのを望んでいたから」

「それで別れたくなったのか? つまりその程度の気持ちしかなかったってことか」

「それは……」

(どうしよう。何て答えればいい?)

叔父に脅されたと正直に言って信じて貰えるのだろうか。もし信じて貰えたとしても、確実に司波家と和倉家の関係が悪くなる。

(それに叔父様がそんな脅しはしていないって言ったら……証拠は何も残ってないから逆に私がおかしいと言われるかもしれない)

和泉が何の証明も出来ない状況で奈月を信じてくれるだろうか。

(……無理だわ)

信頼関係は木端微塵に砕け散っているこの状況で、絶対信じて貰えるという自信はない。

それよりも叔父の策略に嵌ったとはいえあっさり身を引いたことに失望される。

何を言っても和泉が納得する答えを出せそうになかった。

黙り込んだ奈月から和泉は目を逸らした。

「立ち話をし過ぎたな。部屋に行こう」

このままではいけないと思うけれど、上手い言葉が出て来ない。

和泉の背中を追う形で無言のまま自室の前に辿り着いた。
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