冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
(和泉さまの呼び方まで奈月になってる)

いつの間に和倉から奈月に代わったのだろうか。気になりながらも突っ込む訳にはいかず、必死で頭の中を仕事に切り替える。

「織部焼は十六世紀の終わり頃に現在の岐阜県で生まれたのですが……」

冷静に説明をしているつもりだけれど、声が上ずってしまい苦労しながら言葉をつづけた。



なんとか無事に説明と食事を終えたあと、和泉達は奈月を広川堂まで送ってくれた。

「ありがとう。とても勉強になったよ」

「こちらこそいつもご贔屓いただきましてありがとうございます」

腰を曲げて深く頭を下げる。

「そんなに畏まらないで」

和泉はくすっと笑いながら言い、「また来るよ」と言い帰って行った。

ひとり見送った奈月はぼんやりした気持ちのまま呟いた。

「また……来る……本当かな?」

そうだとしたら嬉しい。そう思っている自分に気付き少し驚いた。

それに妙にフワフワした気持ちになっている。

(私、また会えるのを期待しているんだ。あの人が来るとしても食器目当てで私に会いに来る訳じゃないのに)

浮かれた自分に自嘲しながら休憩室に向かう。

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