冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
奈月は和泉よりも恋愛経験がないようで、手を繋ぐだけでも恥ずかしそうにする。
直ぐにでも自分のものにしたい気持ちを抑え、ゆっくりと関係を深めていき初めて彼女を抱いたときの喜びは今でも忘れられない。
必ず幸せにしようと心に誓った。
それなのに――。
ある日、突然別れを告げられた。
好きな男が出来たと言っていたが、そんな気配があれば直ぐに気付いていたはずだ。
とても信じられなかった。
納得出来る理由もなく、顔を合わすこともない終わり。
もちろん抵抗したが、彼女は和泉に合うことすら拒絶した。
最後の望みをかけてふたりの思い出の場所で待っていると告げたけれど、いくら待っても彼女は現れずこれは現実なのだと理解した。
まるで人格が変ったような不誠実な態度に混乱と絶望で茫然としていた。
しかし数日後に少し落ち着きを取り戻してから、奈月の身に何か有ったのかもしれないと考えるようになった。
彼女は両親を早くに亡くし、叔父家族と生活をしている。
愚痴は殆ど聞いたことはないが、居心地が良いとは言えない環境なのだろうと察していた。
だから家庭で何かあったのかもしれないと考え、自宅ではなく仕事場の広川堂に行き彼女の退勤を待ち伏せした。