冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
午後からもしっかり働かなくてはいけない。いつまでもぼんやりしていないで頭を切り替えなくては。

でも、和泉の印象は強烈でどうしても消えてくれない。

それは和泉の容姿が特別際立っていたのもあるが、奈月にとても優しい眼差しを向けてくれたからだ。

女子高、女子大だったため、男性と接する機会が少なかった。
社交的な性格ではないのと、家庭でのルールが厳しかったため、男性との出会うような機会はなかった。おかげで二十三歳だというのに恋愛経験がほとんどない。

恋の思い出と言えば、中学時代に何も行動しないまま終わった片思いくらい。

(仕事の関係以外で男の人と仲良く話すなんて初めてだったから)

あれも一応仕事だが、奈月の中ではいつものそれとは違っていたし、和泉は奈月にとって特別な男性になった。

我ながら単純だけれど、それが正直な気持ちだ。

休憩室の扉を開くと、先輩社員の深雪が寛いでいた。

「ただいま帰りました」

「あ、お帰り奈月、大変だったで……」

深雪は奈月に労わりの言葉をかける最中、ぎょっとした表情をした。

「……どうしたんですか?」

首を傾げる奈月に、深雪は気まずそうに答える。
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