冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「奈月、そのメイク……」

「メイク?」

「とにかく鏡見て」

奈月は深雪に急かされ姿見の前に立った。その直後ひっと息を呑む。

鏡に映る奈月の顔……頬に濃いピンクチークが真ん丸を描いている。他の誰かがこのメイクをしていたら、ふざけているのかと疑うレベルだ。

これならノーメイクの方がましだった。

「な、なんで?」

確かに今日は学生アルバイトと思われないようにと、しっかりメイクをして来た。でももっと自然な雰囲気だったはず。

「店を出る前にメイク直ししたでしょう? 灯りをつけなかったんじゃない? 暗いところだと想像以上に濃くなるのよ」

「そ、そう言えば」

確かに昼食に出る前にさっと直したが、和泉たちを待たせてはいけないと急いでいたので電気を点けなかったような気がする。

(ああ……最悪)

チークのインパクトが強いが、それだけでなくアイメイクも濃すぎて目力が強すぎて怖い。これを和泉たちに見られていたのだと思うと、恥ずかしくてどうかしそうだ。

(何か言ってくれたらよかったのに)

彼らとしては気を遣って触れなかったのだろうが、それは失敗したと気付かれているからだ。
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