冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
けれど奈月の未練を知るはずもない和泉は、過去を切り捨てたような冷ややかな声で告げる。

「この愛や情は一切ない」

不快感を隠しきれなかったのか、彼の整った顔が僅かに歪んだ。

酷い別れ方をしたふたりだから、結婚相手として歓迎されないのは当然だ。

「はい。政略結婚だと分かっています」

辛さを見せないため言葉が少なくなった。それを和泉は奈月も同じように結婚に否定的だからだと受け止めたようだ。

「わざわざ言う必要はなかったようだな」

そう皮肉気に言い捨てると、別れの挨拶もなくその場から立ち去った。



扉が閉まると、途端に部屋は沈黙で満たされた。

奈月は詰めていた息を吐きその場にしゃがみ込み膝に顔を埋める。

短いやり取りでも受けた痛みは大きかった。
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