冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「お父さんたちだけじゃなくて私の存在がみんなを不幸にしている気がするの。叔父様も叔母様も私が居なければもっと幸せに暮らせたし、愛理も。和泉にだって酷いことをした。私なんていなくなった方が……」

心が折れてしまった。何もかも捨てて消え去りたいとさえ思う。

「馬鹿なことを言うな!」

「馬鹿じゃない、本当のことだもの」

大粒の涙を零すと苛立ったような和泉に怒鳴りつけられた。

「悲劇のヒロインぶるな!」

「そ、そんなつもりじゃ……」

「そうだろ? 消えたいだなんてこれから母親になる女が言う台詞か? 子供のことは考えないのか?」

奈月ははっとして唇を噛み締めた。

(私……赤ちゃんのことを考えられていなかった)

今でもお腹の中で着々と成長しているのに。

「……それに奈月は必要とされている。広川堂の同僚は復帰を待ってくれているんだろ? 亜貴もきついことばかり言うかもしれないが奈月が義妹になるのを喜んでる」

和泉の声は打って変わって柔らかくなっていてそれが余計に涙を誘う。
< 212 / 226 >

この作品をシェア

pagetop