冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「広川堂のみんなには本当に大切な存在。亜貴さんにも感謝している。でも……和泉は本当に私がここに居てもいいの? だって私が和泉の幸せの邪魔をしているよね」

かつて和泉が奈月に言った言葉。

『俺はもう結婚を望んでいなかった。それでも妻を迎えなくてはならないなら、割り切れる相手がいいと考えた。お前なら労わりや気遣いなどしなくていいからな』

その通りに接してくれていたらもっと割り切れたのに。

距離を置きながらも和泉の根底には優しさがあった。

奈月を許せないのはその通りだろうが、それでも何かと気遣ってくれていた。

「奈月……聞いてくれ」

和泉の表情も声もなぜか緊張を孕んでいた。

「和泉?」

「嘘をついていたんだ」

「え?」

何のことか分からず戸惑う奈月の前で、和泉が緊張を和らげるように息を吐く。

「この結婚に愛や情は一切ない。そう言ったがあれは虚勢を張ったんだ。本心じゃなかった」

「え……それはどういう……」

(愛や情が一切ないが嘘だったってこと? 愛情が有った?)

奈月ははっとして口元を手で押さえた。
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