冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「奈月の表情、仕草、声の調子、何もかもを好ましく感じていると言っただろ? 振られたんだと理解してもその気持ちは変わらなかった。和倉家との縁談が持ち上がったときに断らなかったのは奈月を他の男に渡したくなかったからだ。それなのにプライドが邪魔をして本音を言い出せなかったんだ」

「…………」

信じられなくて言葉が出て来なかった。

(和泉がずっと好きでいてくれたなんて……あんなに酷いことをしたのに)

「気持ちが届かないもどかしさ苛立ち奈月にきつく当たった情けない男だ」

「そんなこと……」

「見栄もプライドも捨てて言う。俺とやり直して欲しい。奈月の心の中には他の男がいるのかもしれない。でもいつか忘れさせてみせる。必ず幸せにすると誓うから」

和泉は奈月の左手をそっと取り、真摯に訴える。

奈月の返事は決まっている。本当に私でいいのかと不安はあるけれど、和泉はそんな気遣いは望んでいない。だから彼への愛情だけを言葉にした。

「私も和泉を忘れられなかった。他の人なんて見たことはない。ずっと和泉だけを想ってた」

目を瞠る和泉の手に、自分の右手をそっと重ねる。
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