冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
きっと問い質したいことが山ほどあるのだろう。和泉の中では納得できない問題があるはずだ。

それでも彼はただ奈月の体を優しく抱き寄せた。

「ありがとう……」

和泉の忙しない鼓動が伝わって来る。きっと和泉も奈月の体温を感じている。

久しぶりの温もりは心地よくて、ずっとこのままでいたいと感じた。

「和泉……嬉しい、またこうして触れ合えて」

気持ちの高ぶりを伝えると和泉はまるで泣き出す前のように顔を歪めた。

「俺の方が喜んでる。夢みたいだ」

和泉は奈月の存在を確かめるように大きな手で頬に触れる。

それからどちらからともなく顔を近づけ、キスを交わした。

触れるだけのキスを、離れていた時間を取り戻すように何度も何度も繰り返す。

失っていたものがやっと帰って来た。心の中を満たす極上のキスに陶酔する時間だった。
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