冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
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司波商事、事業推進部の一画にはパーティションで仕切られた和泉の席がある。
プライベートが保たれた環境だが、和泉は周囲を気にしながらあるファイルを呼び出した。
かつて晋也から送られた和倉奈月の調査資料。
ずっと見る気持ちになれずにいたが、奈月に自分の気持ちを伝え再び気持ちが重なった今、ようやく開く気になったのだ。
と言っても奈月の異性関係を確認したいからではない。
和泉が知りたいのは、和倉家と奈月の関係についてだった。
昨日の奈月が誤魔化しを口にしているとは思えなかった。
『私も和泉を忘れられなかった。他の人なんて見たことはない。ずっと和泉だけを想ってた』
あれは真実で別れを決断したのはそうしなくてはならない事情が有ったのだとしたら?
ある可能性を脳裏に浮かべながらファイルの内容を確認する。
最後まで読み終えた和泉は、強い怒りと深い後悔に襲われた。
和倉家内での奈月の扱いはとても信じられないようなものだった。
厳しいルールがあるのは和倉百貨店の令嬢であるからだと考えていたが、状況的にただ自由を制限されていただけのようだ。
報告書では家族の外出に奈月が同行しているのを見た者はいないとあった。
つまり家庭内で疎外されていたと言うことだ。
思い返してみれば縁談を進める中の和倉家の人々の言動にもおかしな点がいくつもあったのだ。
人格を疑うような発言もあった。それでも奈月の家族だからと表面上は友好的に接していた。
しかし真実を知った以上、許すことは出来ない。今後奈月に近付けない。
決意と共に和泉は行動に出た。