冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
和泉と心を通わせた日から、司波家の雰囲気は変化した。
ふたりの仲がよくなっただけでなく、周りも変化しはじめたのだ。
寡黙な義父は不在がちだったけれど顔を合わせれば少しずつ馴染めるようになっていたし、亜貴とは本当の姉妹のように仲良くなっていた。
彼女がオフのときはふたりのお茶会が開かれる。
今も本人のイメージ通りのブラックコーヒーを飲みながら亜貴が溜息を吐く。
「もう三月も終わるなんて信じられないわね。年々時間が経つのが早くなるわ」
「本当ですよね」
「あら奈月はまだ分かってないわよ。三十代になれば更に加速するんだから。四十代になるとその上を行くらしいわ」
亜貴は頬杖を吐いてから庭の景色に目を向けた。
「桜って本当に綺麗よね」
「はい、こうやってお茶を飲みながら眺められるなんて嬉しいです。私、桜が大好きなんです」
「ああ、そうみたいね。和泉は桜の下で佇む奈月に一目惚れしたんだものね」
思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。