冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
夜の十時。奈月は広いベッドに横向きに横たわり、持ち帰った仕事をしている和泉の姿を眺めていた。
無言で難しい案件なのか険しい顔をしている。でも彼の周りにはもう張り詰めた空気はない。
(和泉……大好き)
サラサラの黒髪をかきあげる姿に胸がときめく。ずっと眺めていたくなる。
すると何かを感じ取ったのか和泉が奈月に視線を向けた。
「どうした?」
「ううん、何でもないよ」
和泉は少し迷ってから立ち上がった。
「寝ようか」
「仕事はいいの?」
「ああ」
和泉が奈月の隣に入って来て、奈月を抱き寄せた。
こうして同じベッドで眠るようになって一カ月。もう一人では過ごせないと思う程、彼の腕の中は安心出来た。
「……また奈月が遠くなった」
和泉が言っているのは奈月の突き出たお腹で生じる距離のことだ。
「赤ちゃんが元気に育ってるからだよ。和泉は背が高いでしょ? その影響なのか赤ちゃんも平均より大きいみたい」
「そうか……苦労かけるな、俺のせいで」
和泉は神妙に呟く。
「そんな顔しないで。苦労だなんて思ってないよ、だってお腹にいるのは和泉と私の子なんだから」
「……ありがとう」
和泉が幸せそうに奈月の頬を撫でる。