冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「いいでしょう? 奈月も連れて行ってあげたいけど仕事があるもんね」

愛理は残念そうな表情を浮かべる。本心なのかそれともただ自慢したいだけなのか判断しかねる。でも何と答えれば良いのかは長年の経験で分かっていた。

「うん、残念だけど。地中海旅行、楽しんできてね」

予想通り愛理は奈月の返事に満足したようでニコリと笑った。

「まかせて。奈月の分まで楽しんで来るからね」

奈月は相槌を打ってからキッチンに向かった。食欲は失せていたけれど、何か食べないと明日の仕事に障りそうだ。

残っているものをチェックして適当に食事を作り自室に戻った。


(早くこの家から出て行きたい……)

奈月にとって一番の願いは、冷たい家族から解放されて自由になることだ。

(アパートを借りて、好きなものに囲まれて暮らすの)

自由に時間を遣う。仕事帰りに急に誘われても、断らなくていい。

好きなだけ夜更かしをして、ときには昼までゆっくり眠ったり。気に入った器を少しずつ揃えて飾り自分だけの部屋をつくる。

そんな生活に憧れていた。
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