冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
(和泉の……あんな冷たい目、初めて見た)
突き放したような眼差しは、憎しみに染まっていた。
かつての愛情を惜しみなく伝えてくれていた優しい瞳はもう見られないのだ。
(分かってたし、覚悟もしてたけど……)
悲しさがこみ上げるのを止められない。
「うっ……」
失ってしまった和泉の愛情がどれほど大切なものだったのかを思い知り涙が溢れた。
(和泉が好き……今も、この先も……)
こんな気持ちで、感情の無い結婚生活に耐える自信がない。だけど逃げ道なんて無いし、悩み泣く資格もない。
(だって、私から別れるって言ったんだから)
そして別れに納得しない和泉を、ろくな話し合いもしないまま突き放したのも奈月自身。
散々悩みそうするしかないと決めて、出した答えが彼との別れだったのだ。
この辛い状況は自業自得。
でも本当は別れたくなんてなかった。ずっと和泉と寄り添って生きて行きたいと願っていた。
和泉に初めて会ったあの日から、奈月はずっと彼だけを想っていたのだから……。