冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~

一通り終えると昼の休憩時間に差し掛かっていた。倉庫で出て従業員用の休憩室に向かう。

その途中にこの店の経営者である広川社長に呼び止められた。

彼は五十半ば。広川堂の二代目だが器について深い知識を持っている。月に何日かは全国の工房に赴き作家と直接話をし制作時点から関わる熱心さだが、細かい事務作業は苦手で例えばギャラリーを整える為の資材の仕入れや支払いなどは奈月たち社員に任せるタイプだ。

「奈月ちゃん丁度よかった。連絡事項が」

「はい、何でしょうか」

「急なんだけど明日、司波さまがいらっしゃることになったんだ。海外からのお客様のアテンドらしい」

奈月は「そうなんですね」と相槌を打った。“司波さま”とは昔から広川堂の器を気に入ってくれるお得意さまだ。日本でも三本の指に入る総合商社を経営する資産家で、毎年大量に商品を購入してくれている。

最重要顧客と言える為、たいていは広川社長が司波家を訪ねるし、来店の場合は自ら接客していた。
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