冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「言いたいことはそれだけか?」

冷酷な声に遮られ、奈月は声を失った。

「俺の気持ちは何度も言葉と態度で伝えて来ている。その上で今の発言なら俺はお前に失望する」

「……っ!」

失望という言葉が胸に突き刺さった。

ダメージが大きくて体から力が抜ける。自分の方が余程酷いことを言っているのに。

(和泉にこんな言い方をされるなんて)

これまで彼は決して奈月を否定するような発言はしなかった。いつだって奈月の味方でいつも優しさを与えてくれた。

どんなときも彼の愛情を感じていた。それはどれほど心強く幸せなことだったのだろう。

「……私……」

何も言えない。毅然としようと思っていたのに、予想外のことを言われて混乱しているのは和泉のはずなのに、一瞬で立場は逆転した。

(言葉が……出てこない)

しばらくしてから和泉が発言した。

「明日の夜九時にいつもの場所で待っている」

「え?」

「こんな電話で簡単に別れるような関係じゃないはずだ」

彼はこの短い時間で冷静さを取り戻したのか先ほどより落ち着いた声音だが、奈月は依然として上手く頭が回らない。

「顔を見て話し合いたい」

(顔を見て?)

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