冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
午後七時に閉店をし、その後片づけや事務処理などで一時間程を過ごしてようやく一日の仕事が終わる。
奈月がノロノロと着替えをしていると、深雪に声をかけられた。
「ねえ奈月、なんか嫌なことでもあった?」
「え?」
深雪は着替えを終えており、腕を組んで奈月を観察するように見ていた。
「最近様子がおかしいよ。元気がないし、お昼だって殆ど食べてないでしょう?」
「そんなことは……」
「ないって言うのは無理があるよ。前は張り切っていた接客にも力がないし」
仕事のときは沈む気持ちを表に出さないようにしていたつもりだけれど、深雪に悟られたのだから全く上手く出来ていなかったということだ。
(私って駄目だな……)
和泉と別れて十日が経つのに、気持ちが楽になる気配はない。
毎晩ベッドに入ると必ず和泉との思い出が浮かび苦しくてなかなか寝付けないし、ようやく眠れても今度は夢に見て朝泣きながら目覚めるような毎日だ。
常に身体がだるくて食欲が湧かない。
「深雪さん、気にしてくれてありがとうございます。心配をかけてしまってごめんなさい」
どんなに辛いときでも、人の優しさは嬉しいものなのだと実感する。