冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「そんなこと気にしなくていいんだけど、本当に大丈夫? この前常連さんからかなりきつめの叱責を受けていたでしょう?」

「はい」

先週接客をした客とトラブルが起きたのだ。元々気難しい客な上に当日の機嫌が悪かったため、希望の品が揃っていないことを責められた。

理不尽な叱責だったが、接客業であれば問題のある客にあたる場合があるのと覚悟している。広川堂は落ち着いた客が多くトラブルは稀だ。

だからクレームは目立ちやすいが奈月としては割り切っている。それに先日は和泉との件で頭がいっぱいで正直言って怒鳴られた記憶はもう霞んでいる。

「あの件はもう気にしてないから大丈夫です。ただプライベートでいろいろあって少し落ち込んでいたんです」

「そうなの? 先日の件を気にしてないのは良かったけど、プライベートの方も心配ね……私で良かったら相談にのるけど」

「ありがとうございます、でも大丈夫です」

「そう……でも貯めこむのは良くないわよ。ストレス発散した方がいいわ。ちょうどこれから友也さんと飲みに行くんだけどやっぱり無理?」

「いえ! 私も行っていいですか?」

深雪はやや驚いた様子だった。
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