冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
再会
和泉と別れて二月が過ぎた。
喪失感と痛みが無くなることは無かったけれど、和泉がいないことを心が少しずつ受け入れ初めているのだろう。
夜、眠れなかったり泣きながら目覚めたりすることはなくなっていた。
ただ、ふとした拍子にどうしようもない虚しさに襲われる。足元が崩れるような不安感。
働いているときだけは忘れられていたから、奈月はますます仕事にのめり込むようになっていた。
秋の気配が深まった十月一日。
営業時間終了後にギャラリーで片付けをしていると、事務作業を終えた深雪が合流した。
彼女はざっと辺りを見渡してから要領よく器を片付けて行く。
今展示しているものは今日で終わり、数日の休憩を挟んで別作家のものを展示する予定を組んでいる。
器に問題がないか確認しながら深雪が口を開いた。
「奈月、今度社長と工房に行くんだってね」
「そうなんです。北関東の工房の新人作家さんと展示品の打合せをしてきます」
奈月にとって初めての出張だ。友也と深雪は工房や和倉百貨店を含む他店舗に行くことがときどきあるけれど、奈月はバイト時代も合わせ店から出たことがない。
しかし先週ついに社長がそろそろ工房に行ってみようかと声をかけてくれたのだ。