冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「十分だよ。友也と深雪ちゃんは一切駄目なんだから。いつものように身振り手振りでって訳にはいかないでしょ。そう言う訳でお願いするよ」

「は、はい。分かりました」

社長からの指示なので頷いたけれど、緊張感でいっぱいだった。司波家の人とは直接話したことは無いけれど、遠目から見た印象はかなり気難しい方のようだったのを思い出したからだ。

(失敗がないようにしなくちゃ。あとで司波さまが好みそうな商品の確認をしておこう)

どんな質問をされても答えられるようにしておかなくては。

奈月が固くなっているのを察したのか、広川はにこりと笑った。

「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。明日いらっしゃるのはご当主ではなく、“いずみさま”だそうだから」

「あ、そうなんですね」

「よろしく頼むよ。休憩の邪魔して悪かったね」

「いえ」

広川社長は明日の視察の準備で忙しいのか、倉庫の隣の事務室に足早に入って行った。

(いずみさまか……どんな人なんだろう)

海外のお客さんを連れてくると言っていたし、彼女も司波商事で働いているのだろう。
ハキハキした物言いのキャリアウーマン像が脳裏に浮かんだ。

(圧倒されてしまいそう)
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