冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「ええ。慣れるまでは不便もあるでしょうけど、困ったことがあったら遠慮なく相談してちょうだい」

「は、はい。ありがとうございます」

固く厳しい雰囲気ではあるけれど、発言には気遣いを感じた。

(怖い印象だけど、本当は優しい人なのかも)

幾分ほっとしたせいかつい和泉の方に目を向けてしまった。

彼は相変わらず冷ややかな空気を纏っている。一気に気持ちが沈んでいった。

それから少しして当たり障りのない会話を終えた叔父が席を立った。

奈月もソファーから腰を浮かしたとき、それまで無言だった和泉に声をかけられた。

「話がある」

「……はい」

和泉と向き合うのが怖かったが覚悟を決めなくてはならない。

強引に別れたことを責められるだろうし、今後の生活について注文を付けられるのかもしれない。

亜貴は叔父の見送りをすると部屋を出て行く。

二人きりになると、和泉は立ち上がり奈月の目の前までやって来た。

和泉からは、奈月を拒絶する厳しく冷たい意思が伝わってくる。

彼が不機嫌なのは奈月への嫌悪感だけでなく、不本意なこの状況に対するいら立ちもあるだろう。

「この結婚に愛や情は一切ない」
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