冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~
「そう? 随分遠慮するのね。気が変ったら言ってね。夕食は午後七時からだからその頃にまた声をかけるわ。荷物の整理もあるだろうしゆっくりしていてね。あ、手伝いの者が必要かしら?」

「いえ! ひとりで大丈夫です。本当に気遣って下さりありがとうございます」

「家族になるのだから当然よ」

亜貴は後でねと言い残し部屋を出て行った。

一人きりになると奈月は脱力して部屋の中央の小さめのソファーに腰を下ろした。

茶色の布製で、ふんわりと座り心地がいい。

目を閉じて息を吐く。朝から緊張し通しですっかり疲れ果てていた。

(この先どうなるのかな)

亜貴が気さくな良い人でよかったけれど、和泉に許しを得るのは困難だ。

ふと気がついた。

(もしかして和泉には新しい恋人がいるのかな?)

彼は女性から人気がある。恋人になりたいと望む女性は奈月と交際している間も後を絶たなかった。

フリーになった後、誰かの誘いにのり意気投合したのだとしたら。

(結婚が難しい相手と付き合っているとか?)

だから形だけの結婚をしようとしているのか。勝手な妄想がどんどん広がって行く。そんなことを考えても自分が辛くなるだけなのに止められない。
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