サンタクロースに恋をした
「私の弟の渉(わたる)よ。今年どうしても部員が1人足りなくて、席だけ置いてもらってたんだけど、偶にはどう? って誘ってみたの」
「そう、なんですね」 

 心臓が早く動いて、顔は熱くなってくる。

 まさか、こんな近くにいたなんて思いもしていなかった。同じ高校に通っていたなんて……。

 でも、彼の態度を見ている限りおそらく私の事は覚えていない。そう思ったのに。

「君、泣いてた子だ。確か……2年前のクリスマスの日」
「え、あ、そ、そうです。あの、あの時は本当にありがとうございましたっ」

 まさか、覚えていた。先輩の記憶の中に、私がいる。あんな短い時間のやりとりだったのに。

「え、なあに? 2人とも知り合いなの?」
「知り合い……と言えば知り合いか」

 初めて見るちゃんとした顔は、さすが先輩の弟、遺伝子は凄いもので、彼もまた非常に端正な顔立ちをしていた。

「ハンカチを、貰ったんです。2年前のクリスマスの日」
「ああ、あの子が那美ちゃんだったのね。話は聞いてるわ。運命の再会ね」
「う、運命だなんて」

 先輩は1人、うふふ、と笑ってこの状況を楽しんでいる。

「運命……とか知らないけどさ、僕、彼女いるし」

 だけどそれは一瞬にして幕を閉じた。
 
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