サンタクロースに恋をした
「あ、2人とも、もう来てたんだ。ごめんね、買い出し行ってて遅くなっちゃった。先輩は、まだなんだね」

 平川さんと時藤さんはスーパーの袋を持っている。

「だな。まあ、そのうち来るだろ」
「てか安藤、お皿とか用意してって言ったじゃん、もー」
「あ、そうだった、忘れてたわ」

 2人のやりとりを見ていると、何故だろう、心が苦しくなる。

「相変わらずだなあ、安藤は」

 頬を膨らませながら言う平川さんだけど、安藤くんを見る目は優しくて、さっきの彼の言葉の意味をようやく理解できたような気がした。

 笑っている顔を自分に向けられると、自分まで幸せになる。相手の嬉しさや楽しさが伝わってくる。

 平川さんが、先輩よりも安藤くんを選んだ気持ちがなんとなく分かったような気がした。安藤くんは、本当に相手のことを思って行動している。

 自分が、自分を、じゃなくて、どうしたら相手の心を満たすことができるか。

 先輩がそういう人ではない、ということじゃないけど、安藤くんはそれが強い。

「丸山さんは、どんな料理が得意なの?」

 平川さんが黙っている私に話しかけてくれる。

「えっと……偶にパンとかを焼く程度で……。お菓子はあんまり作ったことないですね」
「そうなんだ、パン焼けるなんてすごいね。そういうのも作ってみたいけど、部活の時間じゃ難しいよね……発酵の時間とかもあるし」
「ならさ、いつか合宿とかしたらどうだ?」
「もちろん苺大福も作るわよね?」
「いいね、姉さんにも来てもらって」

 私の何気なない会話から、どんどんと話が広がっていく。なんだか、ここは居心地がいい。嫌な緊張が一切なくて、空気が穏やかに流れている。

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