サンタクロースに恋をした
「あのっ、先輩」

 部活帰り、皆と別れた後、私は先輩の後を追う。

「丸山さん、どうしたの?」

 同じ中学だったからもちろん帰る方向も一緒で、もしできるなら先輩の隣を歩きながら帰りたい。

 欲は1度出ると次々と湧いて出る。

 そのくせ、緊張で次の言葉が思い浮かばない。

「あ、あの……」

 早く言わないと、先輩に迷惑をかけちゃう。それに、他の生徒もいて気まずい。

「……もう暗いし、一緒に帰ろうか」
「あ……はいっ」

 まさか、先輩の方から言ってくれるなんて、こんなに嬉しいことはこれ以上にない。

 どうしよう、何を話そう。何かを話したいのに、内容が全然浮かんでこない。私たちの共通点……。

「あの、先輩」
「ん?」
「先輩は、苺大福好きなんですか?」

 って、こんなことを聞いてどうするの? 

 でも、とりあえず他愛もない話をして距離を縮めたい。私と先輩の間にある長い長い距離を、少しずつ短くしていきたい。

「うん、苺大福、好きだよ。っていうか、苺のお菓子が好きなんだ」
「美味しいですよね、苺のお菓子」
「うん」

 先輩、なんだか中学の時よりも雰囲気が柔らかくなったような気がする。

 あの時は、人を信用しないような冷たい空気を纏っていて、まるで自分を見ているようだった。

 もしかして、あの人が変えたのかな。平川さんに会って、変わったのかな?

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