サンタクロースに恋をした
「どうしたの?」

 彼もやはり生身の人間だったようで、私の儚い恋心は一瞬にして砕け散った。

 会えただけでも奇跡に近いものなんだから、その先を望む方が間違っている。ていうか、その先なんて私は……。

「いや……なんでも」

 誤魔化しても仕方ないのに、そんなことを言ってしまう。

「朝から昼まで机に伏しっぱなしの人間になにもないわけないでしょ?」

 そりゃそうですよね、と声には出さないけれど1人心の中で突っ込みを入れた。

 はあっと息を吐きながら窓の外を見ていると、ああ、雨が降ってきた。雨の雫が地面に打たれる音がやけに悲しみを帯びて聞こえる。

 体を起こして窓際に行って窓を開けて外に腕を出して手の上で弾く雫を見つめる。私の手に触れては壊れる雫。

「まさに私の恋……」

 そう、こんな風に一瞬にして終わってしまった。

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