サンタクロースに恋をした
 キッチンに来ると、私たちがいても余裕なくらいの広々とした空間が広がっていて、しかもすごく清潔にされている。

 渉先輩もいつの間にか姿を現す。

「まずはパン生地から作りましょうか。それから、夜ご飯のおかずを作っていきましょう。男子諸君は、捏ねるの頑張ってね。筋肉痛にならないように。でも、あとで温まるから大丈夫かしら」

 梨衣名先輩の笑顔……一瞬だけ不気味に見えたのは気のせい……? それに、温まるっていうのは、なんだろう?

 パン作りが始まるとイースト菌の香ばしい匂いが充満して、生地ができる前からパンを食べたくなる。

 今日作るのはバゲットとベーコンエピで、夜はそれに合わせてメニューは洋食。

「そういえば、ご両親は?」
「今は2人とも長期出張でいないの。だから、のびのびとしてね」
「ありがとうございます」

 てことは、普段の掃除や料理も2人でやっているということで、部屋を見渡すとどこを見ても奇麗で、単純に学校に通いながらなのにすごいなあと思う。

「姉さん、苺大福のことも忘れないでよ?」
「分かってるわよ。ちゃんと言われた餡子と苺と道明寺粉用意してるから」
「それは、テンション上がりますね」

 急に莉子が会話に入ってくる。苺大福、というワードなら莉子の耳にはどんなに小声でも入るから面白い。
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