サンタクロースに恋をした
 戻ってくると、紅茶の独特の香りが匂ってくる。

「紅茶、出来てるよ」
「ありがとうございます」 

 テーブルに置かれたカップが2つ、これは先輩の隣に座る流れで……いやいや、何私そんなに意識してるの。普通に隣に座ればいいだけ。

「……やっぱり、僕と2人じゃつまらない?」

 先輩は、心悲しさの漂う顔をして私を見ている。

 私、1人で緊張しているばかりで先輩のこと全然見えてなかった。

 また、先輩のことを傷つけてしまう。そんなこと、したくないのに。

「いえ、それはないですっ。ただ………いつも私ばかり余裕がなくて……」
「余裕?」

 頭ではいけないと分かっているのに、言葉が勝手に出てくる。止めないと、口を閉じないと。でも、1度蓋を開けたらそれは止めどなく出てくる。

「先輩といると……やっぱりどうしても緊張しちゃうんです。心臓が早く動いて、先輩を見られなくなっちゃって……」

 これじゃあ、好きだと、遠回しに伝えているのと一緒じゃない。

「だから、つまらないとか、そんなんじゃないんです」
「那美ちゃん…………僕」

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