サンタクロースに恋をした
 平川さん、私たちが帰って来てからなんだか明るく振る舞おうとしている気がする。

 わざと笑って、自分の気持ちを押し込めているような……。何があったんだろう……。私たちが温泉に行っている間に。

「平川さん、ちょっとだけ話いいかな?」

 デザートタイムを終えて星が見たいと1人お庭に行った平川さんの後を追って、私も外に出た。

「丸川さん。うん、いいよ」
「平川さんは……どうして安藤くんと付き合ってるの?」

 安藤くんと別れて欲しいとか、そんなんじゃない。ただ、1度どうしても聞いてみたかった。

「……安藤といると、笑えるからかな」
「でも……」
「もしかして分かっちゃった? 渉先輩のことが好きだって」

 あははっと笑う平川さん。

「えっと……」

 平川さんは、星を眺めながら話を続ける。

「2年前ね、元彼にフラれて泣いてたら先輩がハンカチくれたの。見ず知らずの私に。それから、先輩のことずっと心の中で思ってた。初めは会えなくてもいいし、むしろ会えないからこそ好きだったんだ。でも、実際に会って先輩により強く惹かれていったの」
「じゃあ」
「でもね。いろいろあって、安藤がその度に慰めてくれて。ああ、この人となら大丈夫かもって思った」
 平川さんは、やっぱり笑っている。でも、表情はとても切なげで、今にも涙が流れ出しそうだった。
「でも、先輩も多分平川さんのこと」
「ううん、もう、違うよ。先輩は先輩の道を歩いてる」

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