サンタクロースに恋をした
 平川さんは言い切った。

 切ない。苦しい。悲しい。そんな感情が私の中に次々と湧き起こる。

「平川さん……私……安藤くんのこと好きなの」

 その言葉を聞いて、ようやく私の顔を見た。

 でも、何故か表情は何も変わっていなかった。もっと驚いたりするかと思ったのに。

「そっか……ごめんね。私なんかが安藤の彼女で」

 平川さんは、また空を見上げた。

「私、安藤の隣にいてもいいかな?」

 触れたら消えてしまいそうなほど、平川さんが弱々しく見えた。

 なにをそんなに自分の中に抱えているんだろう。好きな人の好きな人は憎いはずなのに、平川さんにはそんな感情は浮かばない。

 本当は私が隣にいたい、安藤くんともっと同じ時を過ごしたい、そう思うのに、「うん」と返事をしてしまっていた。
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