サンタクロースに恋をした
「……よおく考えて。もし安藤と別れたときに、やっぱり安藤のことが好きだったと思っても、それは流石に遅い。ちゃんと自分と向き合って、本当に好きなのは誰なのか、答えを出して、それでもやっぱり先輩が好きだと分かった時、安藤の手を離してもいいんじゃないかな? 多分安藤は分かってくれるよ。那美が寂しいとかそういうのだけで安藤の隣にいるわけじゃないって、私は分かるから」

 莉子の言う通りだ。

 安藤の優しさに触れて少しずつ惹かれていった自分がいて、その全ての思いを自分で否定してしまうなんてそんな悲しいことはない。

 自分の中に芽生えている恋心を自分で踏んでしまうなんて。

「ありがとう、莉子」

 莉子が話を聞いてくれたおかげで、縛られていた心が軽くなる。

「ううん」

 莉子が作ってくれたホットミルク、心に染みる。

 部屋に飾ってあるカレンダーを見ると、クリスマスまであと1か月となった。今年のクリスマスは……きっと笑って過ごせる。

 もう前を向いてしまった先輩のことを考えるんじゃなくて、私を好きでいてくれる安藤のこと、もっと真剣に考えないと、いつか罰が当たってしまうから。
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